photo courtesy=FBI Baltimore
Following the incident involving the vessel “DALI”, the Synergy Marine Group, based in Singapore, formed an emergency team immediately on March 26, 2024. The company sent the following explanation to its customers: “The vessel was manned by 22 Indian crew members” and “The cause of the accident has not yet been identified.”
In response to inquiries from the Japan Maritime Daily on March 27, 2024, the American representative of Synergy Marine stated:
Question: “There are reports that a blackout was the cause of the incident. Has Synergy Marine confirmed this?”
Synergy Marine: “At this point, we have no information. The United States maritime authorities are currently investigating, and we are fully cooperating with them.”
Regarding the ship management contract, they responded:
“We have a direct contract with the vessel owner, Grace Ocean, based in Singapore.”
Synergy Marine clarified that they have a direct contract with the shipowner for vessel management.
The emergency team of Synergy Marine Group has sent the following information to its clients regarding an incident:
Dear Sir/ Madam,
I am writing with deep regret to inform you of an emergency incident involving our managed container vessel M.V. Dali.
Incident Overview:
While under pilotage at Baltimore port with two pilots on board, the DALI allided with one of the pillars of the Francis Scott Key Bridge. The circumstances leading to this incident are not yet clear.
Immediate Actions Taken:
- Notification of Relevant Parties: Notifications have been sent to the USCG, QI, Class, Flag, and Agents.
- Assessment of Conditions: Preliminary reports indicated a power blackout onboard, which was resolved by ship staff. Efforts to assess the extent of damage to the vessel and surroundings are ongoing.
- Our contingency plans are immediately activated and we are setting up a local team at Baltimore to deal with the situation.
Current Status:
- No pollution has been reported as a result of the incident.
- There have been no serious injuries among the crew or pilots onboard. Casualties with respect to traffic on the bridge and the bridge collapse are unknown now. The local search and rescue teams are activated and in progress now.
- The full extent of damage to the vessel and any potential impact on the bridge structure remains to be determined
We fully understand the gravity of this incident and are committed to managing it with the highest level of urgency and care. Such an incident leads to lot of activity on social media. Please be assured we will keep you updated of the contingency and follow ups in a fully transparent manner. We are working with the local authorities on damage control and investigation.
Kind regards
Incident Response Team
MV Dali
〆船舶管理会社シナジーマリンが顧客に送信した事故の説明文は以下の通りである。
“DALI”の船舶管理を行っていたシナジーマリングループ(本社・シンガポール)は事故発生直後の2024年3月26日、緊急チームを編成した。同社は顧客に対し次のような内容の説明文を送信した。「インド人船員22人が乗船」「事故原因は明らかになっていない」
シナジーマリンのアメリカ担当者は2024年3月27日、日本海事新聞の取材に対し次のように答えた。
質問―「ブラックアウト=停電が原因との情報があるがシナジーマリンとして確認しているか」
シナジーマリン「現時点で分かっていることはない。米国の海事当局が現在調査中で全面的に協力している」。
船舶管理契約については次のように答えた。
「船舶保有者であるグレース・オーシャン(シンガポール)と直接契約している」。
シナジーマリンは船舶管理について船主と直接契約を結んでいることを明らかにした。
シナジーマリングループの緊急チームが顧客に送信した事故の内容は次の通りである。
この度、弊社が管理するコンテナ船“M.V. DALI”で緊急事故が発生したので、下記の通りお知らせいたします。
■事故の概要
ボルチモア港にて水先案内人2人で航行中、DALI号はフランシス・スコット・キー橋の支柱の1本と接触しました。この事故に至った経緯はまだ明らかになっていない。
■直ちに取るべき措置
- 関係者への通知 USCG(米国沿岸警備隊)、QI、船級、旗、代理店に通知済み。
- 状況の評価: 予備報告によると、船上で停電が発生したが、船員により解決された。本船とその周辺への損害の程度を評価する努力は継続中である。
- 緊急時対応計画を直ちに発動し、ボルチモアで現地チームを立ち上げ、事態に対処している。 ■現在の状況
①この事故による汚染は報告されていない。
②乗員やパイロットに重傷者は出ていない。橋上の交通および橋の崩落に関する死傷者は現在不明。現在、地元の捜索救助隊が活動中である。
③ 船舶の損傷の全容と橋梁構造への潜在的な影響については、まだ確定していない
私たちは、この事故の重大性を十分に理解し、最高レベルの緊急性と注意をもって対処することを約束する。このような事故が発生した場合、ソーシャルメディア上では様々な活動が行われる。私たちは完全な透明性をもって、不測の事態とフォローアップの最新情報をお伝える。私たちは地元当局と連携し、被害管理および調査に取り組んでいます。
■本船の概要
船名:DALI
コンテナ最大積載数: 10,000 TEU
当時の積載数: 4,679 TEU
重量トン数(DWT): 116,851トン
乗組員: 全員インド人、合計22人
所有者: グレース・オーシャン・プライベート株式会社
航路: ボルチモアからコロンボへ航海中だった。
photo courtesy = Maersk
〆マースク(オペレーター)、Grace Ocean(船主)、シナジーマリン(船舶管理)の関係は今後、どうなるのか。
火曜日にボルチモアの橋に衝突した大型コンテナ船Daliは、デンマークの海運大手マースクがシンガポール船主Grace Oceanから定期用船していた。船舶管理はシナジーマリンである。ロイター通信によると、マースクは顧客の貨物を積んでいたが、マースクの乗組員や職員は誰も乗っていなかったとコメントいたとう。
これは海運業界の商慣行に照らせば、極めて当然のことである。
マースクが船主のGrace Oceanから定期用船していれば、船舶管理会社を選定するのはGrace Oceanである。事実、船舶管理を担当していたシナジーマリンの担当者は、27日の日本海事新聞の電話取材に対し次のように回答している。「シナジーマリンは船主のGrace Oceanと船舶管理業務で直接契約を結んでいる」
問題は、オペレーターが船主から定期用船している船舶が事故を起こした場合、海外のオペレーターは通常、運航上の責任は船主にあると主張する点にある。
今回の事故の場合、米国本土で橋が崩落するという大事故である。
日本の海運業界では、たとえオペレーターが船主から定期用船している船舶であっても、知名度の高い海運大手が記者会見を開催するケースが多い。これは、日本の海運業界では、たとえ法律的にオペレーターに直接責任がないとしても、社会的な立場からオペレーターが釈明する「社会的責任」という考え方である。
一方、2021年3月、スエズ運河で座礁した2万TEU型コンテナ船「Ever Given」(パナマ籍、2018年竣工)のケースでは、オペレーターのエバーグリーン(台湾)は、会見は開かなかった。事故については、日本船主の正栄汽船(本社・愛媛県)が会見を開催した。
今回の事故は、アメリカ本土という地理的関係や全長約3キロメートルの橋が崩落、死者も発生するなど規模が大きい。オペレーターがアメリカ社会に対し社会的責任の観点から会見、もしくは声明を出す可能性は高い。
その際、マースクが定期用船中の船主との関係をどう説明するのか。定期用船の船舶では、船長などを手配する船舶管理は、船主が直接契約している。したがってオペレーターは原則として運航上の船舶の事故を予知する可能性は少ない。一般の人には理解が難しい、オペレーターと船主、船舶管理の関係性をどう説明するか注目したい。